ユニーズ新聞 2011年3月 第2号 はじめに ユニーズ京都代表 大西正広 「知ること・それが理解への第一歩」をスローガンに掲げる、市民ボランティアグループ「ユニーズ京都」の活動を通して、「障がい」、特に「視覚障がい」について多くの方々に関心を持ってもらえることを願って、この新聞を発行します。 音声メニューのご案内 ユニーズ京都では、「点字・拡大文字メニュー」 製作の活動に加え、新たな取り組みとして昨年から「音声メニュー」製作を始めました。 現在、京都高島屋・大丸京都店の飲食店、前田コーヒーの4店のメニュー情報を音声化してCDに収め、音声メニュー製作に理解をいただいたお店の経費負担により、無料配布しています。近々、京都駅地下街「ポルタ」の音声情報も完成します。 音声メニューCDをご希望の方は、ユニーズ京都までお問い合わせください。 「おこしやす京都」アイヘルパー活動について  ユニーズ京都では、観光・研修などの目的で入洛される視覚障がい者を「目の提供」によりサポートするアイヘルパー活動「おこしやす京都」を2008年4月から行っています。2010年12月までの「おこしやす京都」利用者は実質95名、アイヘルパー活動実数156名です。  本会では、活動終了後、利用者・アイヘルパー双方から一定の書式項目に沿って報告書を書いてもらい、それを今後の活動に役立てるようにしています。 その報告のなかから、アイヘルパーとして感じた感想や、会として今後、「おこしやす京都」利用者とともに考え合っていきたい課題について本誌にて連載していきたいと思います。このコーナーが、いろいろな立場の人たちのご意見やご感想をいただける双方向の情報スペースになることを願っています。 アイヘルパーからの活動報告@ “京都駅で待っている間は大変緊張しましたが、お二人にお会いして明るく気さくな方で、サポートさせて頂いているというより、道案内のために一緒に歩いてるみたいな感じで、「大丈夫ですよ!」と声をかけていただいて、こちらが安心させて頂いて大変やりやすかった。案ずるよりは…と言う感じで肩の力も抜けて、楽しく過ごさせて頂きました (上手にサポート出来たかは別ですが…)。 ベテランのサポートを見せて頂いてあんな風にするといいのか! 「目の代わりをする」と言う意味が解り、大変勉強になりました。京都の町を歩いて桜の下を歩いて…本当に楽しんで頂けるのかな?と思っておりましたが、こちらの声の表情で素晴らしさが分かる、と言っていただけたので、なんかホッとしました。” アイヘルパーからの活動報告A “異性のお手洗いの付添いには、近くにいる同性の人にお願いするのも一考だと感じました。今回2回目の活動という事と、会場にお連れしたら良いというので、前回より気持ちは随分楽でした。当たり前の事ですが、サポートの加減が前回とはまた違う。十人十色だなぁ〜と感じました。歩いて行く内にその方のペースも分かってきました。会場内で他の事(席を探したり、コーヒーを運んだり)に気を取られてサポートがお留守になってしまった事に反省…。雨降りのサポートは大変! 大きめの傘が便利かも!? 狭い所で自転車が来たり、電柱を避けたり、まだまだとっさに言葉が出ません。回を重ねる毎に慣れてくるのでしょうかぁ…” ユニーズ京都からのコメント;  「おこしやす京都」を使っていただく方には実施概要と申込書をお送りしています。  その実施概要の中に、「活動に無理のないプランになるよう、コーディネーターと十分相談し、それを参考に詳しいプランを立ててください。また、当方は観光ガイドとは異なる為、観光コースや施設などの決定は、予約も含め、利用者ご自身でお願い致します。」という項目があります。  これは、できうるかぎり自己決定を尊重しつつサポートしたい!というユニーズ京都の思いからです。 しかし、利用者の中には、観光案内人の役割もして欲しいと願っておられる人もあります。 あるアイヘルパーからのコメントは; 「私が思うアイヘルパーとは、基本的に利用者の方の目の役割を担うことだと思っています。  さらに、京都ユニーズとしてのアイヘルパー活動は、京都市内に特化して、市内の交通手段、有名観光寺院等へのスムーズな誘導、宿泊先への送迎、他県からくる利用者にとって、不慣れな場所を地元の人間が案内することだと思っています。利用者さんが京都でしたいこと、そこまでの移動をお手伝い出来れば、基本的にはOKだと思います。つまり、インフラ面を補うということです。  また、京都観光の内容に関しては、企画ものでない限り、押しつけはしない、あくまでも行きたいところを決めるのは利用者さん・・これは通常の観光と全く同じだと思います。  ただし、「京都」を名乗るユニーズ京都として、地元の理を活かして、ちょっと美味しい物を紹介したり、余裕があれば裏技的なお勧めに連れて行ったりしたい。ここばかりを期待されても困りものですが、これに関しては利用者さんの希望を変える事ではなく、時間とタイミングが合えば提案するということです。  ときおり、観光サポートのはずが荷物持ちになったり、ただの便利屋になった感じを受ける結果になり、問題になっている話を聞くと心が痛みます。自分が担当アイヘルだったら、はっきり拒否してしまうかもしれません。」 「おこしやす京都」の窓口担当の思いとしては; 「一番は,やはり京都の旅を楽しんでいただくこと。利用者さんによって様々。 実施概要に沿うべきですが,利用者さんの思いや願いを出来る限りかなえることができればいいなと思います。」 運営していく立場からすると、利用者の思いとアイヘルパーの実務的な限界を考慮しつつ調整していかねばなりません。「利用する人」と「サポートする人」という対極的な関係ではなく、ともに時間を共有する人と人であって欲しいと願っています。 ユニーズ京都の基本的な考え方について、ご意見ご感想お聞かせください。また、このような活動に参加してみたいとお考えの方もご連絡ください。 ええとこさがそ!体験会 参加者の声 宇陀ガーデン見学記 鈴木清視 近鉄榛原駅のホームに降り立つと曇っていて薄ら寒い。駅前には私たち一行を待っていてくれたかのように小型バスが留まっている。他に乗客はいない。 宇陀は古事記や日本書紀の歴史を秘めた地と聞いていた。苅田の向こうには錦秋の小高い丘を背に民家が点在している。この辺りをのんびり歩いてみたいと思いながら窓外の景色に目を凝らす。 宇陀でバスを降りると目の前には、字陀ガーデンのハウスが広い敷地の中、丘の中腹辺りまで立ち並んでいる。雲闇から漏れる薄曰を反射して明るく、太陽の恵みを感じる。私たちは坂を少し上がった所の建物に案内される。従業員の休憩や食事に使われるこの建物は、三方がガラス窓で見晴らしがよい。私たち十三人がテーブルを囲んでゆったり座るのに恰好の広さである。わたしの正面、東側の窓の向こうには櫟の黄葉が映えて部屋の中まで明るい。作業に邪魔されることなくゆっくり見学できるようにとの計らいで休日の日曜を選んで下さったとのこと、温かい配慮に意謝する。 私たちを招いて下さった太田さんは抜きん出て背が高く、恰幅がある。失明して白杖を使っているが、広い園内を自由自在に歩いている後ろ姿を見ていると、ナビゲーションのような装置を携帯しているのではないだろうかと思うほど確かである。 太田徳昭さんは六十一歳、株式会社宇陀ガーデンの創立者である。三年前に社長を息子さんに譲り、今は会長として育て上げた会社を見守る傍ら、「奈良はぐるまの会」会長として福祉活動にも活躍されている。自己紹介ではジョークがあり、昼食時には菓子を配りあったりしてゆっくり時間が過ぎる。ユニーズのグループに初参加のわたしも和やかな雰囲気にすっかり溶け込んで会話に加わる。 網膜色素変形症でやがて失明すると宣告された時の太田さんのショックは、重度の視力障がいを持つ私たちにはよく理解できる。太田さんは少しずつ衰える視力で園芸を学び、それを職業として立ち上げ、現在の会社に育て上げた体験を淡々と語られる。「花の水加減は土や葉に触れる指の感触でわかる」など、花好きのわたしには共鳴するところが多いが太田さんの場合は趣味とは違う。数は多く、僅かな失敗も許されない。話の奥に秘められている苦闘の跡を垣間見る思いで体験談に聞き入る。字陀ガーデンは東は関東一円から西は九州まで、ほぼ全国の市場に出荷している関西屈指の園芸会社である。園芸ハウスは大小三十を数え、広いハウスは五百坪もある。 話が済むとハウスの見学に立ち上がる。播種から開花までの作業や、育ってゆく苗の説明を聞きながら幾つかのハウスを巡り、指先で実感する。 即売を兼ねたシクラメンハウスはまさに楽園だ。「シクラメンは三分のニほど出荷した」と聞いていたが、五百坪あるというハウスの大半を埋め尽くしていた。篝火花《かがりびはな》の和名にふさわしく、赤、白、緋、紫、ぼかしなど、燃え立つように人々の顔を染めていた。何千鉢の中から選んだ一鉢を大事そうに抱えて見せてくれた友がいた。「照れくさくて嫁さんに有り難うなんて言えないから土産に買った」という友の声もあった。篝火花の中、皆の顔はほほえみ、声は弾んでいた。 シクラメン抱《いだ》けば母の眼差《まなざし》に 色問ふて妻へ土産のシクラメン ユニーズ京都の活動にご支援・ご協力を! ユニーズ京都の「おこしやす京都」活動には通信費やアイヘルパーの交通費など、かなりの経費がかかります。「見えない」事から生ずる、行動の自由を得るための費用を「おこしやす京都」の利用者のみに負わせるのではなく、この活動を支援してくださる方々の力と援助によって発展させていきたいと考えています。 私たちユニーズ京都の趣旨にご賛同いただける方は、一口・千円の協力金をお願いいたします。 振込先:京都中央信用金庫 岩倉支店(店番040) 普通預金 口座番号:0716261 市民ボランティアグループ「ユニーズ」 ユニーズ京都とは? 私たちユニーズ京都 は、「知ること・それが理解への第一歩」をスローガンに、視覚障がいという「障がい」を知ることで、社会生活のバリアを取り除いていこうと活動している市民ボランティアグループです。活動内容は、視覚障がい者の方に利用してもらえる点訳・文字訳のサービス、京都市内の飲食店へ点字メニュー設置を呼びかける普及活動、観光・研修などで京都に来られる視覚障がい者へのサポート活動「おこしやす京都」、ボランティア講座や、季節のイベント「ええとこさがそ!体験会」開催などに取り組んでいます。 お問い合わせ 市民ボランティアグループ 「ユニーズ京都」 代表 大西正広 電話・ファックス番号 075-722-6484 Eメール shimin-youneeds@kyoto.zaq.ne.jp HP http://youneeds.gozaru.jp/ 発行人 大西正広 編集人 朝原理恵子