アイヘルパー養成講座
白杖や盲導犬を使って歩いておられる視覚障がい者と出会ったとき、貴方は、どのように声をかければよいのだろうと戸惑われたことはありませんか?私にも何かできるだろうか?と思っておられる方への講座です。一人でも多くの方々に、街中で気軽に視覚障がい者に声をかけていただけたらと、心と技術を得るための学習会を行っています。
アイヘルパー養成講座は座学と実習
座学では、対面の場合、第2・第4の土曜日を使って 3回(計6時間)
オンラインの場合、19:30から21:00 4回(6時間)
そして、この座学を終えた後に、屋内実習・屋外実習を行います。何れも、一定数の受講者が集まった段階で実施いたします。
観光や研修を目的として入洛される視覚障がい者を「目の提供」によって安全・安心して行動してもらうための「アイヘルパー」ボランティア活動です。座学と実習を交えながら楽しく学んでいきます。
- 一定数の受講者が集まった段階で実施いたします。
- 受講希望の方の日程調整をして講座日を決めます。
- 受講料は実費のみ。
申し込み・問い合わせ
申し込み・問い合わせは、下記ユニーズ京都まで
メール:shimin-youneeds@kyoto.zaq.ne.jp
電話:075-722-6484
アイヘルパー実践記
アイヘルパーH・Sさん
5月末:茨城のF氏(50代)の場合
鍼灸学会に出席のF氏は博識で話し好きな方で、要望もはっきり伝えてくださるので、とても動きやすく感じました。ただ、反省点だったのは階段です。「手前で一度止まって教えてほしい」との依頼があり、最初の階段では「上がりですか?」と確認されました。以降は都度伝えるようにしましたが、「基本を忘れるなかれ!」と反省しました。全体として、控えめな手引きになってしまったかもしれません。
6月中旬:神奈川のR氏(40代・アメリカ人)の場合
R氏とは日本語が通じず、案内中はとっさに英単語が出てこず、反応を見て通じているか確認するような対応になりました。やはり、通訳がいない場面では英語の基本的な単語やフレーズを知っておくことが大切だと感じました。
お寺は平坦というより、石段や溝、幅の不規則な道なども多く、的確に伝えないとつまずかせてしまう危険もあります。私の語学力の拙さで様子をうまく伝えられないのが歯がゆく感じられました。
とはいえ、外国の方との初めての体験は貴重で有意義でした。
なお、龍安寺では盲導犬の入室可否の確認がスムーズにいかず、OKが出るまでの間、少しいらだった雰囲気がありました。
7月中旬:東京のT氏(40代)の場合
湖西線比叡山坂本駅から出発し、スタート時の気温は29度。坂道や階段では息が荒くなられていたため、ゆっくりしたペースで歩きました。白杖を長く使われていたので、前の人の足元に触れてしまう場面もありました。出町柳でコンビニを探している際、ツタヤ付近では歩道をふさぐ自転車やU字型鉄柵に杖先がはまり、「杖を短く持ちます」とのことでした。最初から「すみません」とこまやかに声をかけてくださる方で、私にとってはとても心地よい同行でした。
ケーブルカーの一番前に座り、「ケーブルカーは自分の力だけで登っていくのではなく、上から引っ張ってもらっているんだ、と学生時代に教わった」と話しておられたのが印象に残っています。
アイヘルパーM・Mさん
1回目のサポートでは緊張しましたが、思っていたよりなんとかなり、安心して2回目を迎えることができました。
2回目の方はとてもお話が上手で、こちらが楽しませていただいたほどです。
人は皆それぞれ違い、歩き方や誘導の仕方もそれぞれだということを実感しました。「どのようにさせていただきましょうか?」と尋ねることの大切さを学びました。
そして3回目は、盲導犬ユーザーのアメリカ人というユニークな組み合わせでの京都観光。混雑していた清水寺の音羽の滝では、優先的に水を飲ませてもらうなど、親切にしていただきましたが、盲導犬がいることで観光地や飲食店に入る際の手間や、盲導犬自身のお世話の大変さなど、今まで知らなかったことを体験しました。
「観光ガイド」と「アイヘルパー」は違う――その難しさを改めて感じました。
でも、こうしてボランティアをさせていただくと、自分自身が優しい気持ちになれるように思います。
講座を受講して
アイヘルパーN・Sさん
父の介護経験を経て、「誰かの役に立ちたい」という気持ちが自然と芽生えました。それは仕事に向かうエネルギーとはまったく別の感情でした。
通勤の帰り道、千本北大路のバス停から盲学校までの間、何度か視覚障がいの方と一緒になり、自然に「ご一緒しましょうか?」と声をかけていました。ある日、「前にもお会いしましたね」と言われ、私は驚きました。「声や話し方を覚えています」と教えていただき、視覚に頼らない記憶力や感覚に気づかされました。
屋外実習で初めてアイマスクをつけてガイドしてもらったとき、視界が閉ざされた中で、声、ざわめき、空気の温度、におい――五感を通して空間を認識する感覚を少しだけ体験することができました。
思い出したのは、小学生の頃、今宮神社のお祭りで母と歩いた時のことです。府立盲学校の近くに咲く桜を見て、「目の見えへん人の学校に、桜の木があるのはなぜ?」と母に聞きました。母は「花の匂いや、落ちてくる花びらが顔に触れることで分かるんやで」と当然のように答えました。その言葉の意味が、今になってようやく本当にわかった気がします。
アイヘルパーY・Mさん
道路に敷かれた点字ブロック。今までは「色の違う石」くらいにしか見ていませんでした。でも、それが「点」と「線」に意味があるものだと知りました。
そして、その点字ブロックの上に乱雑に置かれた自転車の多いこと。路地から突然現れる暴走自転車。階段の高さが均一でないこと。バスや地下鉄の案内アナウンスが不明瞭なこと。
視覚障がい者が安心して歩ける街は、一体どこにあるのでしょうか。
ある方からは「前はひとりでよう歩いてたけど、最近はもう怖くてひとりで歩けへん」とも聞きました。
仕事を辞めた後、社会との関わりが無い生活に耐えられず、何かボランティアをと考えていた時、「アイヘルパー」という活動に出会いました。「目の代わりになる」ことで、京都の良さや雰囲気を言葉で伝えられる――それができれば、これほど素晴らしいことはないと思いました。まさに「究極の一期一会」です。
もちろん、各場面ごとに最良の手引きの仕方はあるのでしょうが、マニュアル通りではなく、「相手を大切に思う気持ち」や「共有する時間をともに楽しむ心配り」が何より大切だと思います。
そして、前述のように危険も多いのですから、「安全第一」に。
ある集まりで視覚障がい者をサポートしたとき、私はつい「あっ、そこ危ない!」「車が来ました!」などと口にしてしまいました。すると「そこってどこ?」「車は前から?後ろから?」と聞き返され、私は「???…そっかあ…」と、自分の言葉のあいまいさに気づかされました。
ぶつかって冷や汗をかいたり、恥ずかしい手引きになってしまったこともありました。
それでも――。
人でいっぱいの京都で、少しでも心地よく過ごしていただくにはどうすればよいか。それを考えることが、私たちの出発点だと思います。
視覚障がい者として講座に協力
T・Mさん
たくさんの人と出会い、いろいろなお話ができたのも、1対1で一緒に歩いたからこそです。皆さん熱心で、私が伝えたことも素直に聞いてくださいました。
お手伝いさせていただいて一番うれしかったのは、「Mさんと歩いてよかった!」と言っていただけたときです。
ある日は雨。傘をささねばならず、小柄なSさんと背の高い私が相合い傘で歩くにはどうしたらよいか、二人であれこれ悩みました。Sさんは周囲の情景を丁寧に説明してくださり、お寺の門に彫られた石の装飾を「触ってみますか」と案内してくださったり、「大きな八百屋さんがありますよ。何か買い物はありませんか?」と気遣ってくださいました。
「アイヘルパーの講習を受けておいたら、町で困っている方を見かけたときに、気軽に声をかけられるようになると思って」とおっしゃるその心の優しさに、私は胸が熱くなりました。
こうした純粋な気持ちの人が、もっともっと増えてくれることを願っています。
H・Hさん
サポートをしていただくようになって気づいたことがいくつかあります。
まず、トイレを使う時には「洋式か和式か、どちらをご希望ですか」と尋ねていただきたいです。
中の様子が清潔かどうかなど、簡単でもよいので伝えていただけると助かります。
ペーパーの場所や、水を流す操作方法なども教えてください。
また、誘導の際は、エレベーター・階段・エスカレーターなど、その利用者さんの経験や状態に応じて対応してください。
暑い中での講習や実践は大変かと思いますが――
「今日は人の身、明日は我が身。腹が立ったら横にして、心は丸く、気は長く」
そんな気持ちで、良い汗をかき、良いアイヘルパーさんになっていただけたらと願っています。