バス停で、ちょっとだけ「目」になってください
京都市バスなどの乗合バスには、音声で行き先を案内する「ガイドスピーカー」がついています。ドアが開くと「◯◯系統、△△行きです」とアナウンスが流れる仕組みです。でも、実際には音が小さすぎたり、まったく聞こえなかったりすることも多く、視覚障がい者にとっては、どのバスが来たのか判断しにくいことがあります。
そんなとき、そばにいるあなたが「○○行きが来ましたよ」「○○系統です」とひと声かけてくださったら、本当にうれしくて、安心できる瞬間になります。小さな子どもが親御さんに「〇〇番が 来たー!」と元気に教えているのが聞こえるだけでも、助かることがあるんですよ。
あなたが先に来たバスに乗られるときは、「私はこのバスに乗りますね」と声をかけてから乗っていただけると、その後の判断がしやすくなります。
「ベンチがありますよ」も、大事な“情報”のひとつ
バス停にはベンチがある場所もあります。「ここにベンチがありますよ」と案内してくださる親切な方もおられます。ただ、視覚障がい者の中には、音声を聞き逃さないよう、ベンチには座らず停車位置の近くに立っていたいと思う人もいます。
いちばんありがたいのは、「ここにベンチがあります」という“場所の情報”です。座るかどうかを決めるのは本人なので、「なんで座らないの?」と思わずにいてもらえるとうれしいです。
雨の日、猛暑の日——ひと声のぬくもり
雨の日も、猛暑の日も、視覚障がい者はバスの行き先を聞き取るため、停車位置の近くで立ち続けています。
見えていれば、屋根のある場所や木陰を見つけて待つこともできるのでしょう。けれど私たちは、それができません。
盲導犬と一緒に待っていると、犬が雨にぬれたり、熱いコンクリートの上でじっとしているのが気になります。
ふと後ろから足音がして振り向くと、屋根の下や木陰から何人もの人がバスに向かって歩いてくる——そのとき、なんとも言えない悔しさや寂しさを感じることがあります。
「どうして、自分たちだけがここで…?」
でもそれは、きっと誰かが悪いわけではありません。
ただ、そこに“見えない現実”があるだけなのです。
だからもし、よければ、こんなふうに声をかけてみてください。
「こちらで一緒に待ちませんか?」と。
そのひと声が、雨や日差しを避ける以上の、あたたかさを届けてくれます。
行列の最後尾、どこですか?
混み合うバス停では、自然と乗客が列をつくることがあります。視覚障がい者にとって、どこが「最後尾」かがわかりにくく、それが一番の不安になります。
近づいてくる様子を見て、もし迷っていそうなら、「〇〇行きのバスですが、最後尾はこちらですよ」と声をかけて案内してもらえると、とても助かります。並んだ後も、列が進むときには「前に進みますよ」と声をかけてもらえれば、取り残されることなく待つことができます。
ほんのひと声、「目」のかわりを
バス停での出来事を振り返ると、視覚障がいのある人にとって一番うれしいのは、その場の「今の様子」を知らせてもらえることです。それはまさに、“目のかわりになってもらうこと”。
声をかけてもらうだけで、その場所が少しあたたかく感じられます。あなたの何気ないひと声が、大きな支えになることを、どうか知っていてください。