電車の中で視覚障がい者に出会ったら
あなたが、ちらほら空席のある電車内で座っているとき、白杖を持った視覚障がい者が乗ってきました。
入口付近に立ち、車内の様子を感じ取ろうとしているようです。
そのとき、あなたならどうしますか?
私たちはこんな問いかけを講座で行っています。
「どうぞこちらへ」と声をかけて案内する
どうしたらいいかわからないので、見守る
黙って手を引いて案内する
——日常の中でも、さまざまな対応が見られます。
まずは「見守る」ことから
すぐに行動するのではなく、まずはその人の次の動きを見守ってみてください。
援助が必要そうだと感じたら、こう声をかけてみてください。
「空席がいくつかありますが、座られますか?」
車内の状況を言葉で伝えるだけでも、視覚障がい者は安心できます。
「席を譲らなきゃ」と構えすぎなくても、空いている席へ案内するだけで、十分な援助になります。
そのうえで、こんなやり取りが生まれるかもしれません。
「もうすぐ降りますので、ここで立っておきます」
「はい、ありがとうございます。座らせていただきます」
もし座ることを希望されたら、次のような声かけが喜ばれます。
「入口の近くがよいですか?中ほどがよいですか?」
視覚障がい者も、見えている人と同じように「どこに座ろうか」と考えたいのです。
見えていない情報を言葉で伝えることは、その人の選択肢と主体性を支えることにつながります。
小さなサポートもありがたい
つり革を探しているようなら、
「ここにありますよ」
と軽く手を添えて持たせてください。
それだけで大きな助けになります。
また、座席に案内した後に、
「私は向かいの席に座りますね」
と伝えると、視覚障がい者が先に降りるときに、お礼の言葉を伝えやすくなります。
バスの中で
低床バスが普及して乗り降りはしやすくなりましたが、後部座席が高くなり、通路も狭くなったため、盲導犬を連れての利用が難しくなることもあります。
こんな配慮が嬉しい
乗車口付近に立っている視覚障がい者に対して、
「どうぞ、私は後ろの席に移りますね」
と一言添えて席を譲ってもらえると、「譲ってくれた方も座れた」と安心できます。
座席への案内の工夫
視覚障がい者が窓側を向いて立っているとき、あなたが運転席近くの座席が空いたことに気づいて「前が空きましたよ」と声をかけると、視覚障がい者は自分の目の前の席が空いたと勘違いするかもしれません。
そんなときは、
「左側の前の席が空きました」
など、方向や位置を具体的に伝えると、より正確に状況が伝わります。
また、ベンチ式の長い座席が空いている場合には、空席の前に直角に立ってもらい、
「両隣にはすでに人が座っています」
など、周囲の様子も伝えると、安心して座ることができます。
こうしたちょっとした配慮が、大きな助けになります。
降車時のサポート
降車ボタンの位置がわかりにくいことがあります。
「ここにボタンがありますよ」
「押しましょうか?」
と声をかけてください。
降車後の安全も大切です。
歩道との隙間や、立木・ガードレールなどがある場合もあります。
もしあなたが先に降りたときは、
「前に段差がありますよ」
「すぐガードレールがあります」
など、一言伝えていただけるととても助かります。
まとめ
視覚障がい者へのサポートは、
単に「席を譲る」「座ってもらう」ことだけではありません。
大切なのは…
見えていない状況を、見えているあなたの目で「言葉にして」伝えること
選択肢を示し、その人の判断を尊重すること