オーパス(5頭目の盲導犬)

5.オーパス

オクター引退後、次の盲導犬を使うかどうかは大きな決断でした。年齢的にも70代後半にさしかかり、もし新たに盲導犬を迎えるとすれば、これから8年間は一緒に歩くことになります。身の回りの環境も変わるかもしれませんし、体力的に最後まで責任をもって管理できるかどうかも不安でした。家族や教会の職員とも話し合った末に、「最後のチャレンジ」として踏み切ることにしました。

貸与されたのは、これまでの盲導犬たちと比べるととても小柄な、体重23kgほどの犬でした。子犬かと思うほどで、どこかで「ユーザーの半分程度の体重がなければ、危険な場面で踏ん張れない」と聞いたことがあり、その点が少し心配でした。しかし、ハーネスを装着して歩いてみると、意外と足が長いのか、歩行に特に違和感はありませんでした。

私は「注文の多いユーザー」として知られているかもしれません。共同訓練の際に使用する散歩コースを把握するため、地図を触って理解できるよう、担当のM訓練士に立体地図の制作をお願いしました。訓練センターのボランティアの方々の協力もあり、いくつかの地図が手元に届きました。それを触ってみて、まっすぐ歩いていると思っていた道が実はカーブしていたり、近道に気づいたりと、新たな発見がたくさんあり、盲導犬との歩行にとても役立ちました。

「オーパス」という名前は何に由来するのかPW(パピーウォーカー)さんに尋ねたところ、ワインの銘柄から取ったとのことでした。歩き始めてすぐに感じたのは、排泄の管理が非常に楽だったことです。過去の4頭は、歩行中に排泄してしまうことや、排泄の回数が多いことに常に気を配る必要がありました。オーパスも当初は多少の苦労がありましたが、生活リズムが整ってからは、朝起きたとき、寝る前、そして外出中に1回の排尿と、日に3回のリズムが定着しました。

特に感心したのは、「お出かけ・うんち」と声をかけると、たとえ少しでもがんばって排泄を済ませようとしてくれることです。外出前に下の心配をしなくてよいというのは、本当にありがたいことです。

体格が小さいことで、乗り物の利用時にも助かっています。電車やバスはもちろん、自家用車の車内でも、以前はハーネスを外さないと収まらなかったスペースに、装着したままでも短時間なら問題なく乗っていられるのです。

オーパスとの歩行の多くは散歩が中心ですが、いくつかの決まったコースがあり、出かける前に「今日はH高校へ行く」「今日はI保育園」と伝えると、分かれ道でその方向へ迷わず進んでくれます。ときどき使うバス停も、途中まで行くと後は何も指示しなくても、きちんと目的の場所へ誘導してくれます。この小さな頭に、どれだけの情報がインプットされているのかと驚かされます。

私の足腰が一時期弱り、右手に支え杖、左手にハーネスという状態で家族のサポートを受けながら歩いていた時期がありました。そのとき、思っていた以上に多くの人が犬を連れて散歩していることに気づきました。そうした方々が、盲導犬が近づくと道をあけてくれたり、反対側の歩道に渡って犬同士の接触を避けてくださったりと、まるで「救急車」のような対応をしてくれることに感謝しています。これは目がある家族が同行して初めてわかったことでした。

また、家族と一緒に出かける際、以前の盲導犬たちは特に気にせず歩いていたのに対し、オーパスは遅れてくる家人を気にかけて立ち止まり、待つことがあります。これは仲間意識の表れかもしれません。

動物病院での診察や予防接種の際も、入り口で拒否する犬もいれば、診察台に自ら上がる犬もいます。1頭目から3頭目までは自宅でシャンプーをしていましたが、乾かすのに苦労して腰が痛くなり、4頭目からは犬の美容室にお願いするようになりました。オクターはしぶしぶ出かけていったのに対し、オーパスは待ちかねたように大喜びで出ていきます。

オーパスとの日課となっている散歩を、これからも淡々と続けていけることが、私自身の健康維持にもつながっています。

エドからオーパスまで、5頭の盲導犬に関わってくださったすべての方々に、心から感謝申し上げます。

そして、静かに眠るエド・ハピネス・ユニス・オクター、いっしょに歩いてくれてありがとう。

オーパス、これからもどうぞよろしくね。

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