拒否事例として:動物園

盲導犬拒否は、行動の自由を阻む

「犬も歩けば棒に当たる」と言いますが、私の場合、盲導犬とともに新たな一歩を踏み出そうとするたび、「犬はダメ!」という一言に行く手を阻まれることがあります。

法律があっても、なお残る壁

かつては、視覚障がい者が盲導犬と一緒に交通機関や飲食店の利用を断られることが多くありました。こうした状況を受けて、2002年に「身体障害者補助犬法」が施行されました。

この法律は、盲導犬・介助犬・聴導犬といった補助犬の同伴を、公共施設や交通機関、飲食店などで認めることを義務づけたものです。

施設側の義務

正当な理由なく補助犬の同伴を拒否してはいけません。
拒否した場合は、法令違反として行政指導の対象になります。

使用者側の義務

認定証の提示と、補助犬の衛生・行動管理が求められます。

法施行から20年以上経っても…

2025年、全国盲導犬施設連合会が行った調査では、盲導犬ユーザーの48%が「受け入れ拒否を経験した」と回答しています。

主な拒否の場は、飲食店、交通機関、宿泊施設。

さらに、2024年に施行された「改正障害者差別解消法」で合理的配慮が義務化されたあとも、「社会の理解が進んだと感じない」と答えた人が77%にのぼりました。

【事例1】動物園での経験から見えてきたこと

旭山動物園での交渉(2005年)

朝日放送のツアーで訪れた旭山動物園では、盲導犬同伴の可否をめぐって一時混乱がありましたが、交渉の末、入園が認められました。

京都市動物園での対応(2017年〜)

2017年の秋、地域のあるこう会の一環で京都市動物園を訪れた際、園職員に「盲導犬は事務所で預かることになっています」と入園を止められ、副園長に話を聞くと「内規でそうなっています」との返答。過去の他園での事例や補助犬法を説明し、関西盲導犬協会にも相談しました。

その結果、翌年2018年初春にようやく話し合いの場が持たれました。所長や啓発担当者、盲導犬候補犬2頭、園関係者、ボランティアのTさん、そして私と盲導犬が参加し、盲導犬が園内の動物にどのような影響を与えるかを実地で検証しました。

心配されていた鳥類にはほとんど反応が見られず、虎や鹿・ロバが一時的に興奮したものの、大きな問題は認められませんでした。

動物園の比較と啓発の課題

このとき、ボランティアのTさんが独自に全国の動物園における補助犬受け入れの実態を調査した資料を提示してくださいました。北海道から中部にかけては受け入れが進んでいる一方、関西以西では受け入れが進んでいない現状が明らかになりました。

しかし、この実地検証や話し合いを経ても、関西盲導犬協会や京都市動物園から市民に向けた情報発信や方針の公表は行われず、協会からの途中報告もほとんどありませんでした。最終的に、入園が認められたという連絡が来たのは、1年半以上が経過した2019年4月のことでした。

なぜ発信しないのか?

盲導犬が動物にほとんど影響を与えないことが確認され、入園が認められるまでに至ったのは前向きな成果です。けれども、それをどう社会に伝えていくのか——ここに大きな課題が残されていると私は思います。

この成果が報道されれば、他の施設や一般市民の理解も進んだはずです。しかし、協会にも動物園にも、メディアに向けた働きかけや情報発信の動きは見られませんでした。

法律や制度だけでなく、現場での理解や経験を共有し、市民とともに環境をつくっていくこと。これは協会や行政だけでなく、利用者自身や市民ボランティアの協働によってこそ、実現できるのではないでしょうか。

最後に——自由な選択ができる社会へ

動物園によっては、環境面への配慮から「盲導犬は事務所で預かります」と説明されることもあります。これは安全確保のための一案として尊重されるべきでしょう。

しかし、それを一律の「決まり」として押しつけることは、視覚障がい者の行動の自由を奪うことにもつながります。

どこへでも、誰とでも、自由に行ける社会。法律を守るだけではなく、その背景にある「人の願い」に寄り添う社会をつくるには、制度の外で、声をあげること、共有すること、知らせていくことが欠かせません。

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