5-3. メニュー作りの変遷

点字メニューづくりの初期は、点字用紙に懐中定規を使って手打ちし、点字の下に手書きでルビ(墨字)を添えることで、お店の人にも読めるように工夫していました。その後、支援を受けて和文タイプライターを導入し、ルビ部分はタイプで印字するようになりました。

飲食店では水濡れの可能性もあるため、「サーモフォーム」と呼ばれる、点字や図表を熱圧着で立体的に浮き上がらせる装置を使って製作するようになりました。しかし、これは経済的にも負担が大きく、複写にも多くの時間を要する、大変な作業でした。

やがてパソコンの普及と点訳ソフトの登場により、データ作成から点字プリンターによる印刷が可能になり、作業の効率は大きく改善されました。また、弱視の方にも対応するため、拡大文字によるメニューも作成し、点字メニューと一緒にファイルにまとめて飲食店に届けるようになりました。

点字使用者が少数派となるなかで、店に行く前にメニューの内容を音声で確認できるよう、CDによる音声版メニューの作成・配布も始まりました。これに伴い、音訳ボランティアの学習会も開催するようになりました。

近年では、インターネットでメニューを確認できる店も増えましたが、それを使いこなせる視覚障がい者は限られています。また、店内で口頭注文をしようとしても、パネルでの操作を求められ、そもそも注文自体が困難になる場面もあります。こうした“新たなバリア”の出現が、あらためて問い直されています。