日常生活実態調査(1983年)
― 地域で安心して暮らすために ―
1983年、ユニーズ京都では、点字を使用している視覚障がい者のご夫婦32世帯を対象に、電話による日常生活実態調査を実施しました。調査項目は、買い物や文字情報の入手方法、町内会との関わり、公的ガイドヘルパー(ガイヘル)制度の利用状況など、11項目にわたりました。
見えてきた課題と声
調査を通して、地域社会とのつながりの希薄さや、公的制度の限界が浮かび上がりました。当時のガイドヘルパー制度は利用範囲が狭く、「もっと柔軟に使える制度にしてほしい」という要望が多く寄せられました。
近所づきあいについては、頼みごとをする必要もあり、関係を慎重に大切にしているという声がありました。町内会の役割については、免除される代わりに寄付で応じているケースも見られましたが、「免除されるだけでは寂しい。何か地域の一員として果たせる役割があれば」との思いもありました。
中でも印象的だったのは、「目の提供を緊急に求めたいとき、関わってくれる人がいない」という切実な声です。たとえば、まだ会話のできない乳幼児が突然泣き出したとき、何が起こっているのかを知りたくても、視覚で得られる情報が得られず、不安が募るという状況も語られました。
暮らしの中の工夫と知恵
調査を通して、日々の暮らしの中で積み重ねられたさまざまな工夫も明らかになりました。
たとえば——
- 外出の際、家の場所が分かるよう、玄関にスイッチを入れたラジオを置き、その音を頼りに戻ってくる。
- よちよち歩きの子どもに鈴をつけ、その音を頼りに後ろから見守る。
- 靴下は色違いをくくりつけて保管し、洗濯後も迷わないよう工夫。
- 墓参りや散歩にも行きたいが、当時のガイヘル制度では利用が難しく、白杖でゆったりと歩くのも困難。
こうした声の一つ一つが、制度だけでは補えない支援の必要性を浮き彫りにしました。
「eye helper(アイヘルパー)」の発想へ
この調査は、視覚障がい者が地域で安心して暮らすために何が必要かを考える出発点となりました。
制度のすき間を埋める存在として、「ちょっとしたこと」を手助けする市民ボランティアの必要性を私たちは強く感じました。
たとえば——
- 郵便ポストに入っている手紙の差出人名を見てほしい
- ゴミの分別表示を確認してほしい
- 商品の賞味期限や金額を読み取ってほしい
本来は近隣住民の協力が望ましいけれど、プライバシーの問題から頼みにくい現実もあります。だからこそ、民間ボランティアが「eye helper(目の代わり)」となる支援の仕組みが必要とされているのです。
この調査をきっかけに、ユニーズ京都は「目の代わりとなる支援とは何か」「地域でともに生きるとはどういうことか」を市民とともに考え、行動する取り組みを模索しはじめました。