郵便あて名書き

点字を「文字」として社会的に認めてもらうための運動のひとつに、「郵便のあて名を点字で書く」取り組みがありました。

現在では、スクリーンリーダーを活用し、パソコンで宛名を印刷するなどの方法も一般的になっています。しかし1980年代当時、点字によるあて名書きは、視覚障がい者が自力で対応するには限界があり、多くの場合は晴眼者に依頼するか、カナタイプを使える一部の人が対応する状況でした。

このようななかで、「視覚障がい者が点字であて名を書いた郵便物も受け付けてほしい」とする運動が1980年代初頭に始まりました。
1983年(昭和58年)、まず近畿郵政局が点字のみの宛名による郵便物の配達を認めました。さらに翌1984年(昭和59年)には、郵政省が全国の郵政局に対し、点字のあて名書きを正式に受け付けるよう通達を出し、制度は全国へと広がっていきました。

とはいえ、「本当に点字だけで確実に相手に届くのか?」という実態を確認する必要がありました。

そこで盲福研では、実際に会員が協力し、点字で宛名を書いた封筒を各地域のポストから投函するという調査を行いました。

その結果、投函した80通余りのうち、いくつかは先方に届かないものもあり、点字宛名の郵便がまだ完全に安心して使える状況ではないことが明らかになりました。

しかしその後、パソコンや印刷技術の普及により、点字によるあて名書き自体が少なくなっていきました。それにともない、この問題が社会的な課題として深まることはありませんでしたが、点字が「文字」として社会の中で認められる大きな一歩となったことは、確かな前進だったといえるでしょう。

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