「伝える」「つながる」——市民とともに歩んだ点訳と交流の試み
点字メニューや、校区で学ぶ視覚障がい児の点字教科書など、限られた時間の中で多くの点訳をこなす必要がある中で、一定のレベルを備えた点訳者の存在が会の活動としても強く求められるようになってきました。そうした中、点訳者の養成とともに、より多くの市民に視覚障がい者について理解を広げたいという思いから、私たちは地域に出向き、開催場所や時間帯にも工夫をこらした講座を実施しました。
YMCA、京都ファミリー、青年の家、信用金庫などを会場とし、土日だけでなく、平日日中に関われる会員が講師を務めることで、平日の講座開催も実現しました。
こうした取り組みの中で、山科で行った講座の受講者が発展的に「コスモス」というグループを立ち上げ、地元の視覚障がい者との交流の場を持つようになったり、教科書の点訳においても英語など専門性の高い分野に力を入れるようになりました。
また、京都市ボランティア協会が主催する「ボランティア大学」にも、視覚障がい者部門として参加し、多くの受講者を迎える機会にもつながりました。
一方で、点訳とは別に啓発活動の一環として、体育祭を行った学区とは別の地域において、ソフトクラブの皆さんと一緒に「盲人野球」を開催しました。さらに、上京区社会福祉協議会の仲介により中学校のグラウンドをお借りし、そこでも盲人野球を楽しみました。
当日は中学生約50名が参加し、アイマスクを装着してバットを振ったり、地面を転がるハンドボールの音を頼りに守備を行ったりするなど、和やかな雰囲気の中で、貴重な体験をしてもらうことができました。早朝から地元体育振興会の方々がグラウンドの整備やライン引きなどに協力してくださり、学校の先生方も終日見学されるなど、地域と学校が連携した新たな啓発の一歩を感じることができました。
また、一般市民との接点を持つ企画として、京都新聞がツアーとして企画した観光バスによる鳥取への梨狩り旅行にも参加しました。ひまある会として63名が申し込み、2台のバスのうち1台は我々のメンバーによるバス、もう1台は一般のツアー客と一緒のバスとなりました。
あいにく私は急用のため参加することができず、その日の様子を直接見ることはできませんでしたが、初めて視覚障がい者と行動を共にしたという市民の方も多かったのではないかと思います。
こうしたツアー旅行では、視覚障がい者は支援者と一緒に参加することが多く、参加費も合わせて負担する必要がありますが、ひまある会では晴眼者も一般の参加者として同じように参加するため、視覚障がい者にとっては出発地点と解散地点までを確認・確保すれば、旅行自体は晴眼のメンバーと自然に過ごすことができます。