搭乗時の安全訓練

「視障者搭乗時の避難訓練に関する説明会」

~視ボ連の取り組みから生まれた貴重な体験~

京都ライトハウスを拠点に活動する視覚障がい者ボランティア連絡会(通称「視ボ連」)は、1983年、盲福研の呼びかけにより発足しました。ライトハウスの協力を得て、12のグループが集まり、地域を越えてボランティア同士がつながり、情報を共有する場としてスタートしました。

以来、著作権、ボランティア保険、手引きの方法など、共通の課題や関心事を持ち寄り、それぞれの活動に活かすための意見交換が行われています。

特に印象深い企画のひとつ

視ボ連の活動の中でも、とりわけ印象深い企画のひとつが、「視覚障がい者搭乗時の避難訓練に関する説明会」です。
この説明会は、ホテル日航プリンセス京都を会場に開催されました。

きっかけは、視ボ連に参加しているO点訳サークルの代表・Tさんと、その知人であるKさんとの出会いにありました。

Kさんは、1985年に起きた日航機墜落事故(御巣鷹山事故)で、遺族のひとりです。事故当時、乗客全員が救命胴衣を装着できるほどの30分以上の時間的猶予があったにもかかわらず、520名もの尊い命が失われた現実に、深い疑問と悲しみを抱かれました。

「娘の供養のためにも」と、他の遺族とともに「航空機安全国際ラリー」を設立し、代表として国内外を視察。特に航空機安全対策が進んでいるアメリカなどを訪れ、より安全な飛行環境の実現を目指す活動を続けておられます。

Kさんが点字による「安全のしおり」の制作に取り組んでいた折、Tさんとの対話の中で「視覚障がい者が搭乗する際の避難訓練」の課題が話題に上り、実現へとつながりました。

説明会の内容と学び

説明会では、視覚障がい者が実際に避難用装備に触れながら学べる貴重な体験の場が提供されました。

  • 酸素マスクの位置やその実物を確認
  • 救命胴衣の装着方法(前後の区別が難しい点など)について、ひとりひとりに丁寧な説明

後半には質疑応答の時間も設けられ、ある参加者から
「非常時には何も持たずに脱出を、との説明でしたが、盲導犬がいる場合はどうすれば?」
という問いがありました。これに対し、担当者は
「盲導犬は身体の一部と考えていますので、ご一緒に脱出してください」
と回答されました。しかし、「50度以上もある脱出口の傾斜を盲導犬とともに下ることが本当に可能なのか?」といった、現実的な課題も浮き彫りになりました。

サークル間の情報共有が生んだ成果

このような体験が実現した背景には、視ボ連というネットワークの存在があります。サークル同士が情報を持ち寄り、声を届け合うことで、視覚障がい者の安全を考える実践的な機会が生まれたのです。

視ボ連の取り組みは、日々の交流と協力の中から、思いがけない成果をもたらすことを改めて感じさせてくれました。

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