5-4. 点訳活動

点訳にあたっては、基本的にメニューの内容をできる限りすべて紹介するよう努めてきました。独自に点字メニューを制作するお店も現れはじめましたが、なかには主だった品目だけを抜粋して掲載する例もありました。私たちは、視覚で得られる情報をできるだけ等価に点字で伝えることを目指し、図やイラストで示されている部分は除きつつも、文字として書かれている情報は極力省略せずに点訳するよう努めました。

視覚障がい者が読みやすく、選びやすくなるよう、レイアウトにも工夫を凝らしました。たとえば、価格はすべて行末にそろえて表示し(価格で選ぶ方も少なくありません)、料理の分類が明確になるように、料理名の間にスペースを空けたり、分類ごとに分けたりしました。これらは通常の点訳ルールとは一部異なるものでしたが、利用者の利便性を最優先にした実践的な配慮でした。

点訳作業で最も重視したのは「読み合わせ」で、とくに価格の数字については間違いがないよう、何重にも確認を行いました。また、中国料理などで読み方に不安のあるメニューについては、必ずお店に確認を取ることを徹底していました。

紙の点字用紙で打ち出していた頃は、誤りがあれば部分修正だけでなく、1ページ全体を打ち直すことも珍しくありませんでした。とりわけ季節メニューが含まれている場合には、提供期間に間に合うよう早めの完成が求められ、作業には常に時間的な緊張感が伴っていました。

やがてパソコンの点訳ソフトを使うようになると、一部の修正や差し替えにも柔軟に対応できるようになり、作業負担は軽減されました。ただし、店舗側からのメニュー更新の申し出はそれほど多くなく、最新情報の把握には常に課題が残っていました。

このように、点字メニューの制作には、正確さと迅速さ、そして何よりも「読む人の立場に立つ」ことを大切にしてきました。利用者に寄り添ったメニュー作りを、常に心がけてきたのです。