ライトハウスで続けていた毎週水曜日夜の「点字教室」だけでなく、より多くの市民に視覚障害について知ってもらいたいという思いから、ライトハウス主事のご協力も得て、伏見区役所の公会堂をお借りし、南部の拠点として「日曜教室」を開講することができました。
この教室でも、さまざまな出会いがありました。あるとき、小学4年生の女の子が「点字を習いたい」とお母さんと一緒に参加してくれました。
日曜教室では、点字学習だけでなく、語り合いの時間も大切にしていました。その中で、私はイソップ寓話「ウサギとカメ」の話を少しアレンジして、「多様性」について考えるきっかけを皆さんに投げかけました。
―― 足の速いウサギと、足の遅いカメが競争する。ウサギは最初からカメに負けるはずがないと思い込み、途中で油断して眠ってしまう。カメはその隙にゴールを目指して進み、勝利する。
この話をもとに私は問いかけました。「カメは本当に、ウサギと正々堂々と競争しようとしていたのか?」「相手の油断によって勝ったことに、満足感はあるのだろうか?」
むしろ大切なのは、自分と相手が「違う」ということを認めることではないか。カメは走ることではウサギにかなわないかもしれない。でも、水の中では元気に泳ぎ回れる。そんなふうに、それぞれが異なる特性を持っていて、その持ち味を生かすことで、元気に楽しく生きていけるのだと思うのです。
一つの物差しで優劣を決めてしまうと、誰かを下に見てしまったり、自分を無理に合わせようとしたりして、苦しくなることもあります。「障害」があるかないかに関わらず、それぞれが持つ可能性を認め合える、そんな社会をつくっていきたいとお話しました。
後日、その小学4年生の女の子のお母さんから「うちの子は標準より小さくて、日頃気にしていたのですが、この話を聴いて、少し救われたようです」と伝えてくださったことが、今も心に残っています。