タンデム自転車(tandem bicycle)というのをご存じでしょうか?
今回取り上げる自転車は、前後に並んで乗り同時に駆動する二人乗りのものです。前部に乗車する人はキャプテンまたはパイロット、それ以外の後部に乗車する人はストーカー(Stoker)またはコパイロット(co-pilot)と呼ばれます。
2人乗りのタンデム自転車は、2人で漕ぐことにより出力が2倍になる一方で空気抵抗はあまり増えないので、1人乗り自転車と比較して高速での走行が可能となります。
見えない・見えにくい人はサイクリングを楽しむことはできません。そこで見えている人が前・視覚障がい者が後ろに乗車して走れるタンデム自転車が各地で数年前から利用されるようになってきました。
京都でも、ぜひタンデム自転車で楽しめる環境を整えていきたいと考え、2013年に京都サイクリング協会(KCA)とユニーズ京都で話し合い、2014年に、京都府警に出向き「公道を走れることを京都でも認めて欲しい」と要望書を提出しました。
同年の5月、宝ヶ池においてタンデム自転車の体験会を実施しました。10数名の視覚障がい者とパイロットをする晴眼者(見える人)会員が力を合わせて池の周りを走りました。風をきって走行する爽快感を、初めて感じた人、再び自転車に乗れたことに感激した人。二人で力を合わせてペダルを漕ぎながら、楽しい会話も弾みました。
一方で、府警との話し合いはすんなりとは進みませんでした。もとより一般の者も乗れる自転車であることから乱暴な乗り方をする人も出て来るのではないか?など、リスクに対する懸念が許可を阻んできました。
しかし、全国10県で公道を走れるようになってきたこともあり、2015年11月、京都においても公道での走行が認められました。現在では半数を超える府県で走行が可能となってきています。
京都市障がい者スポーツセンターにおいては以前からKCAの協力も得てタンデム自転車の体験会を開催してきていましたが、一定の周回路を回るというもので、公道を走れることができるようになった今、もっとタンデム自転車を通して一般市民と障害のある者が時間を共有できる場の設定を考えていかないか、と担当職員に申し出ました。が、その反応は弱く、その後の発展にはいたっていません。
2018年、当初の目標であった京都八幡木津自転車道線(桂川サイクリングロードおよび木津川サイクリングロード)におけるタンデム自転車体験会を実施することができました。KCAの皆さんには10数台のタンデム自転車をスポーツセンターから会場まで運ぶこと、パイロット役も引き受けていただくなどお世話になりました。
10kmを自転車で走る体験は応募して来られた視覚障がい者にとっては心地よくうれしい一時であったことがその後の感想からも感じ取れます。
翌年には、他府県の視覚障がい者にも呼びかけ、神奈川・静岡からも体験会に参加する人がありました。
一定の成果は得られたものの、公道を走れるようになったことを、もっと積極的に生かしていけたら!公的機関に働きかけてもなかなか具体化しないのが実態です。
地域の中でタンデム自転車を通して住民と地元の障害のある者が時間を共有し、理解の輪を広げていけないだろうか?そう私は考えています
自力で考えられることとしては、自らがタンデム自転車を所有し、パイロットを引き受けてくださる人を募り、その方と日程調整をして、安全確保できるルートを一緒に楽しみながら、ときには買い物をしたり、新たなポイント地点を探求したりする。
この事例が現実のものになるとすれば、交通事情が不便な所に住んでおられる人にとっても、楽しみながら、その時々の目的を果たすことも可能になるのではなかろうか?
もとより、実施するにあたっては、クリアしなければならない課題は幾つも現れてくるでしょう。それらを一つずつ解決していくエネルギーは必要となります。
共感してくださる人を増やし、その人たちの協力もあってこそ実現するものです。
パイロットとして走ってみよう!と手を挙げてくださる人が何名も現れたら、私もタンデム自転車を買うことも考えようかな!